奈良市に4日、新たなフランスのホテルブランドが開業した。県は奈良観光の「脱日帰り化」を目標に掲げて宿泊施設建設の補助をしており、このホテルも制度を利用して建てられた。
開業したのは「ノボテル奈良」。パリを拠点に世界570カ所以上でホテルを展開する「ノボテルブランド」だ。最寄りは近鉄新大宮駅で県コンベンションセンターに近接し、平城宮跡にもほど近い。
出張をしながら余暇も楽しむ、「ブレジャー」(ビジネスとレジャーを合わせた造語)をめぐる需要の取り込みを狙う。
客室は全264室。料金は部屋のタイプや時期により変動するが、1泊2万~10万円程度だ。屋上のバーでは奈良の山々が一望でき、大和茶を提供。レストランでは葛城山のふもとで栽培された小麦を使ったピザを提供するなど、奈良での宿泊体験の魅力を演出する。
開業セレモニーで戒田真総支配人は「奈良の課題である、日帰り観光地の脱却に向けて一翼を担う」とあいさつ。日帰り観光客が奈良公園に一極集中し、泊まってもらえない、そんな県の課題認識に触れた。
観光庁の統計で、昨年の県内の宿泊者数はのべ約264万人で、全国で4番目に低い。県は宿泊施設の数が少ないことが一因として、2021年に宿泊施設の客室数を25年度末までに約1・2倍の1万2千室にする目標を掲げ、宿泊施設を建設する事業者への補助制度を始めた。
ノボテル奈良はこの制度の1件目の認定で、2億円の補助を受けることが決まっている。同時に認定された天理市の東横インが昨年10月に先行して開業している。県は計4件を認定している。
山下真知事も開業セレモニーに出席。「インバウンドの観光客がうなぎ登りに増えており、来年は大阪・関西万博もある。県内の宿泊需要はどんどん高まるのではないか」と期待を寄せた。(仙道洸)